アンドリュー・ワイエス展

東京都美術館で「アンドリュー・ワイエス展」を観た。NHKの日曜美術館に出演されていた担当学芸員の方が妻の知り合いだということもあり、夫婦で土曜日の開館直後に出掛けてきたのだけれど、会場はやや高めの年齢層の入場者で混み合っていた。とはいえ、楽しみにしていた「End of Olsons」の前には人がいない時間もあり、ひとりでゆっくりと作品に向き合う時間を持つことができた。「境界」という今日的なテーマを軸に編集された展示作品は幅広い年代をカバーしていて、80年代以降の明るさと軽さを感じる作品への変容にも魅力を感じたけれど、やはりオルソン家を題材にした1939年から1969年にかけての作品群に力強い存在感を覚えた。その最後の作品に位置づけられる「End of Olsons」は、しばらく眺めていると家がやや暗い海に向けて傾斜をゆっくりと沈んでいくような、そして繰り返し作品に描かれてきた鳥が風景の記憶として残り続けるような、煙だけでなくオルソン家の姉弟の声も運んだという煙突のやや明るい色彩の印象と相俟って、作家の眼差しや人間性が聞こえてくるような印象深い作品だったと思う。