戦争レクイエム

すみだトリフォニーホールで高関健が指揮する東京シティフィル、東京シティフィルコーア、江東少年少女合唱団の演奏でブリテンの「戦争レクイエム」を聴いた。ブリテンが指揮した1963年の演奏のCDは手元にあって、1度か2度は聴いたことがあるものの、コンサートで聴くのは初めての耳馴染のない曲で、どこまで聴けていたか覚束ないのだけれど、聴き終えて最初の印象は、情熱や感動を受け取ったというよりも、おそらく演奏が難しいであろう作品をきちんと届けて頂いたといった感じだった。ソリストの木下美穂子、宮里直樹、大西宇宙はそれぞれに素晴らしく、合唱もTCPCは過去に何度か聞いた演奏よりも分厚い印象を受け、天上から降り注ぐ江東少年少女合唱団の歌声も美しく、室内楽オケもフルオケも確実な演奏だった(出番の多い金管が頑張っていたように聴こえた。)と思うのだけれど、歌詞を事前に読み、演奏中も両袖に日本語訳が投影されていたとはいえ、その難解さが、高揚や共感を踏みとどまらせていたような気もする。もっともその難解さは、おそらく誠実さでもあって、この日の演奏もその誠実さに根差していたのかもしれないと思ったりもした。第2次世界大戦から80年以上が経過して、この作品が作られた頃とは世間や世界の状況も変化し、戦争について語られる言葉も変わってきている中で、ともすれば安易に戦争を語ってしまう様々な言葉たちから距離を置いてこの作品と向き合う時間を持つことは、貴重な経験だったように思える。