杉本博司 絶滅写真

東京国立近代美術館で「杉本博司 絶滅写真」を観た。杉本博司の写真を初めて観たのがいつだったのか分からないのだけれど、1992年1月に発行されたdeja-vuで「海景」が特集されていたようなので、この頃だったのではないかと思う。もっとも、雑誌に掲載された写真を観ることや、何らかの企画展で数点の作品を観ることはあっても、今回のようにA0判の2倍以上もある大きなプリントをまとめて観る機会はなかった。あらためて「ジオラマ」、「劇場」、「海景」といった有名な作品をオリジナルプリントで観てみると、精緻さや迫力といったものよりも、むしろ何と言うか微妙な緩さというか、コミカルさというか、余裕や楽しさが感じられた。今回の展示では作品の横に杉本博司の言葉と狂歌が添えられていたからかもしれない。時間をかけた慎重な準備と丁寧な仕事の上に成り立っている作品ではあるのだけれど、観る人を突き放したり圧倒したりはせずに、適度な距離感で語り合うような作品に感じられた。

Memories of West Africa

世田谷美術館で「Memories of West Africa ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙」を観た。人類学者の川田順造と陶芸作家の小川待子の夫婦がブルキナファソを中心とする西アフリカで主に70年代に収集したコレクションを展示する企画展で、展示されている当時の生活の中にあった器、工芸品、テキスタイル、楽器といった品々や写真、スケッチ、文章などもそれぞれに魅力的なのだけれど、おふたりが異国の地で楽しみながらコレクションを集めていった長い時間や人生を感じられたことがこの展覧会の一番の魅力だったように思える。20代の後半に1年間のバックパッカー旅行をした際に買い求めた家具や工芸品、楽器などが我が家にもあるのだけれど、年月を経るにしたがって押入に仕舞い込まれ、あるいは捨てられて、存在が希薄になっていった。もしかしたら、あの思い出たちがその後も仲間を増やしていった人生もあったかもしれないと思ってみたりもして、それを望んでいるのではないけれど、限りのある時間を楽しむことに思いを巡らせてみたりもした。

2026年8月は33.4キロ+Hike

2026年8月の月間走行距離は33.4キロだった。月末に木曽に出掛けた際に三女と木曽駒ケ岳に登ろうとしたのだけれど、道を間違えて千畳敷から極楽平経由で宝剣岳に向かってしまい、折からの雨と風でその先の道を断念して千畳敷まで戻り、それから乗越浄土まで登ったものの結局千畳敷まで引き返してロープウェイで下山した。それほど登ったわけでもないのに、右膝裏の筋が痛くなり、心拍数も上がり、過体重と運動不足を思い知らされることになった。ちょっと何とかしなければ。

木曽街道・御嶽神社

木曽音楽祭を4日間の日程を通して楽しんきた際に、木曽福島(福島宿)に宿泊し、馬籠宿、妻籠宿、奈良井宿を訪れ、御嶽神社王滝里宮を参拝してきた。5月から8月にかけて読了した島崎藤村の「夜明け前」が「木曽路はすべて山の中である」と始まるように、木曽の人たちが生活する場所は東西を山々に挟まれた木曽川沿いの狭い土地で、江戸時代には主要な街道だった中山道が通っていたとはいえ、決して豊かで恵まれた土地ではないように思えた。そんな土地で工夫をしながら暮らしてきた人たちが育んだ文化や気質は、おそらく今もこの土地に生きていて、そこから学べることも多いような気がする。これからも木曽音楽祭を聴きに来る機会はあると思うので、ゆっくりとこの土地についても学んでいきたいと思っている。

馬籠宿 Magome
馬籠宿
妻籠宿 Tsumago
妻籠宿
御嶽神社 Ontake Shrine
御嶽神社大滝里宮の参道から檜林を見上げて
奈良井宿 Narai
奈良井宿

第52回木曽音楽祭

2026年8月28日から8月30日の日程で開催された木曽音楽祭を楽しんできた。昨年、初めて木曽音楽祭を訪れて最終日のコンサートを聴いて、いつか全ての日程を通して聴いてみたいと思ったのだけれど、その思いが強かったのか、翌年に実現させることができた。前夜祭コンサートとフェスティバル・コンサートの1日目を三女と、2日目と3日目を妻と一緒に楽しんで、それぞれにとってそれぞれの曲が魅力的だったのだけれど、三女は前夜祭で演奏されたシューマンのアダージョとアレグロやドヴォルザークの弦楽六重奏曲(第3楽章)が、妻は3日目に演奏されたショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番や2日目に演奏されたメシアンの世の終わりのための四重奏曲が特に印象深かったと話していた。自分にとっては、1日目に演奏されたブラームスの弦楽四重奏第3番が、聴き終えた後でシートから立ち上がることも難しく感じられるほどのインパクトで、記憶に長く刻まれる経験になったと思う。木曽から自宅に向かう帰路の車中で、恐らくはこの音楽祭を通じても築かれてきた絆を活かして素晴らしい音楽を届けてくれる演奏者の方々や、そんな音楽祭を長年にわたり支えてくださっているスタッフの方々に感謝しつつ、妻と再訪の計画について話したのだけれど、通し券は発売開始直後に完売といった人気だし、日程を確保できるかどうかも分からず、でも来年も1日だけでもまた聴きに来たいと思っている。