文京シビックセンターのギャラリーシビックで「生誕120周年 菅沼金六展~人物画に魅せられて」を観た。戦前にシカゴで絵画を学び、戦後は雑誌やポスターなど商業デザインの世界で活躍した菅沼金六の作品を紹介する小規模ながらバランスよく丁寧に企画された展示で、展示作品の中では特に菅沼が60歳を過ぎてから描いたデッサン、油彩、パステルの人物画に心惹かれた。晩年、毎年のようにロサンゼルスに出掛けて描いた人物画のモデルたちについて菅沼が書いた文章がパネルに引用されていて、夢を追いかける若い人たちに寄せる菅沼の思いに人柄が偲ばれた。数多くの商業デザイン作品を世の中に送り出し、時代の雰囲気に明るさや優しさをもたらす仕事をされたであろう菅沼が、そうした仕事と重なり合いつつも少し隔たった、よりパーソナルな絵画の領域で、自分ひとりの歳月を重ねつつ作品の充実を増していった様子が思い浮かべられて、じんわりと心が温められた。菅沼金六に出会う機会を得られた素敵な展覧会だった。
2025年1月は42.7キロ+Walk
2025年1月の月間走行距離は42.7キロだった。年明け早々にやや重めのインフルエンザで寝込んでしまったり、仕事がやや忙しめだったりして、ランニングをサボってしまったけれど、2月はもう少し距離を伸ばせそうな気がしている。今年は体重を落としたいと思っているのだけれど、こちらも成果が見られない1か月だった。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲全曲演奏会
サントリーホールで現田茂夫が指揮する東京フィルハーモニー交響楽団のベートーヴェン ピアノ協奏曲全曲演奏会を聴いた。ベートーヴェンのスタイルの変遷を辿れることや、ユンディ・リの代役で弾いたチャイコフスキーのピアノ協奏曲を聴いてからなるべく聴く機会を持ちたいと思っている上原彩子の演奏を楽しみにしていたのだが、上原彩子(1番)、三浦謙司(2番)、吉見友貴(3番)、ソン・ミンス(4番)、横山幸雄(5番)という5人のピアニストの演奏を続けて聴く面白さが一番の魅力だったかもしれない。ピアニスト魅力はいろいろあると思うけれど、輝かしく光る音から淡く漂いあるいは暗く沈む音までの幅広い音色、素早いパッセージを美しく奏でるスピード、迫力のある音を生み出すパワー、個性ある曲の解釈といった要素に加えて、今回のコンサートでは、ピアニストのパワーがどれだけ音になるか、自転車で言うならばペダリング効率、比喩的な感覚だけれど、(特に弱音で)ピアニストの出力が音になる比率が高いほど雑味がなく純度の高い味わいになるような、そんな印象を受けた。オーケストラもピアノと良く響き合って、充実した演奏を楽しむことができた。
東京シティ・フィル第375回定期演奏会
東京オペラシティで高関健が指揮するTCPOの第375回定期演奏会を聴いた。1曲目はソリストに奥井紫麻を迎えたサン・サーンスのピアノ協奏曲第2番で、初めて聴く奥井のピアノが素晴らしかった。力みのない細身の身体が弾き出すしなやかで力強く濁りのない音が素早いパッセージを物ともせずに美しく連なる様子は圧巻で、充実した演奏だった。機会があったらラフマニノフやプロコフィエフ、あるいはモーツアルトの協奏曲も聴いてみたいと感じて、その意味で今回のサン・サーンスという選曲も素敵だったと思う。オーケストラも分厚い音でピアノに応えていて、聴き応えがあった。アンコールのラフマニノフのプレリュード(これも素敵な演奏だった)と休憩を挟んでからの2曲目はマーラーの交響曲第7番で、こちらも異形の大曲を存分に響かせた熱演だった。2022年8月に高関健のサントリー音楽賞受賞記念コンサートでこの曲を聴いたときのブログには「奇怪さを備えた祝祭的・カーニバル的な趣もある作品」と書いていたが、今回はそういったパーソナルで感性的な印象よりも、より理知的な手触りの充実した実験的な精神が実りを結んだ作品といった印象を受けた。今回はいつも以上にゴージャスで盛大な定期演奏会で、日常では味わえない上質な刺激と活力を頂けたことに感謝したい。
響きの森クラシック・シリーズVol.82
文京シビックホールで鈴木優人が指揮する東フィルの「響きの森クラシック・シリーズ Vol.82」を聴いた。1曲目はヨハン・シュトラウス2世のワルツ「春の声」、2曲目は吉本梨乃をソリストに迎えたメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、3曲目は宮田大をソリストに迎えたドヴォルザークのチェロ協奏曲という新春らしい華やかなプログラムだった。ややたっぷりとした歌いぶりの吉本梨乃のヴァイオリンや情熱的な宮田大のチェロと比較して、鈴木優人が指揮する東フィルはいつもよりもやや筋肉質で力強い演奏に感じられたけれど、メロディアスな3曲(しかも協奏曲が2曲!)で新年の雰囲気を十二分に楽しむことができた。