くらしのアナキズム

松村圭一郎著「くらしのアナキズム」(ミシマ社)を読んだ。2、3年前に鶴見俊輔の「方法としてのアナキズム」を読んでから「アナキズム」という言葉が心に留まっていることもあり、朝日新聞の書評で知ったこの本を書店で購入してあったのだが、読んでみると、鶴見俊輔だけでなく、ここ数か月の間に読んだ「反穀物の人類史」や「無縁・公界・楽」、これから読もうとしている「負債論」、この他にも自分が興味を持って読んできた本が取り上げられていて、自分の関心と、東京大学の入試問題に採用される文章を書く碩学の関心が重なり合うようにも感じられ、勇気づけられた。権力に委ねず、また搦め捕られずに、自分たちの問題を自分たちの問題として考え、解決していく能力や仕組みをどうやって手に入れるか、「アナキズム」の本質はそんな問いかけの中にあるような気がする。

2022年1月は120キロ

2022年1月の月間走行キロは120キロだった。10キロのジョグが身体的にも気分的にも大分楽になってきた。今月はキロ7分近いゆっくりペースだけれども20キロを2回走ったので、2月は25キロを一度走ってみようかと思う。

12万円で世界を歩く リターンズ

下川裕治著「12万円で世界を歩く リターンズ」(朝日文庫)を読んだ。1988年の貧乏旅行のルートを30年後の2018年に再訪した旅行記で、1990年に出版された「12万円で世界を歩く」は、文庫化された頃、自分が1997年6月から1年間のアジア旅行に出かける前に読んだ記憶がある。長旅に向かう熱病を昂じさせた本といえば、中学生の頃に読んだ犬養道子著「アメリカン・アメリカ」(文藝春秋)所収の「P、K、Rその他」というエッセイがあり、大学に入ってから読んだ「深夜特急」があり、その他にも多くの本や映画、旅の経験もあった。そうして出かけた1年間の旅で、自分が何を頂いて、これから何を返せるのか、自宅のソファーに寝転んでそんなことを想いながらこの本を読んだ。それにしても、思い返してみると、随分と遠ざかってしまったような気もするけれど、あの1年間は美しかった。

焼肉ドラゴン

昨年12月5日放送のNHKプレミアムステージを録画した「焼肉ドラゴン」(作:鄭義信 、演出:梁正雄・鄭義信)を観た。2008年4月に新国立劇場小劇場で行われた初演の録画で、今年の映画・演劇の1本目はこれにしようと思っていたのだが、落ち着いて観られる時間が取れずに今日が1本目となってしまった。男と女、家族と血縁、民族と言語、国家と個人、健常者と障碍者、差別と抵抗、いろいろな軸が複雑に混じり合いながら笑いと歌と喧騒の中でそれぞれの役を演じる俳優達がそれぞれの魅力を全開にして劇場の空気と観客を揺さぶる、そんな感動が画面からも感じられた。こういう演劇を劇場で観てみたい。映画も未見なので、観てみようと思う。

資本主義と闘った男

佐々木実著「資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界」(講談社)を読んだ。他の「積読」本と一緒に1年以上は書棚で寝かせてしまっていたのだが、昨年末に「富国と強兵」を読み終えた流れで元日から読み始め、この3連休で読了した。3年ほど前に「社会的共通資本」(岩波新書)や「自動車の社会的費用」(岩波新書)を再読した頃、宇沢弘文に関心が向いていたのだが、当時は「鶴見俊輔コレクション1~4」(河出文庫)を大事に読みながら、興味が広がった先の本を読んでいたこともあって、それきりになってしまっていた。今回改めて宇沢弘文の人と思想に触れることができて、今年は宇沢先生を起点とする読書をしてみたいと思った。経済学には全くの門外漢で、そういえば経済系の同級生が枕のように持ち歩いていたサミュエルソンの「Economics」すら読んだことがなく、宇沢先生の専門的な論文は読みこなせないと思うが、今の世の中や自分の「常識」を相対化して考える手掛かりとして、宇沢先生の問題意識や思想の在り方、そして活動の軌跡を学ばせて頂きたいと思っている。それから、本書で活写された戦後史と経済学のダイナミクスは大変興味深かった。