東京シティ・フィル第373回定期演奏会

東京オペラシティでTCPOの第373回定期演奏会(スメタナ:連作交響詩「わが祖国」全曲)を聴いた。高関健が指揮する姿には迷いがなく、オーケストラの音に揺るぎのない意思や逞しい技術を感じる一方で、高校生の頃に購入したという楽譜を手元に置きながら開くことはなく、これとは異なる「チェコ・フィルの伝統的なパート譜に基づく「現実演奏版」」の楽譜を暗譜で振り切る高関健の姿には、この曲でオーケストラの音楽を勉強したという若い頃の高関健の姿が重なって、その音に若さと瑞々しさの輝きが加わっているように感じられた。ステージ上だけでなく、演奏に触発された客席からもいつも以上の集中力が感じられて、それもチケット1枚ウン万円といった会場のやや尖ったオーラではなく、第二曲の終わりに思わず「ブラボー」がかかり、それを何人かの楽員の方が喜んでくれている様子が見えるような温かなオーラがあって、でもその「普通の観客」の集中力がステージ上に無音の圧力を作り出して、その温かく力強い無音とオーケストラの音とが鬩ぎ合いつつ音楽を削り出していくスリリングな空気がすぐそこに感じられるような、特に音が減衰しあるいは短く途切れる瞬間には、手に触れられるほどの切迫感が感じられるような、そんな美しいコンサートだったと思う。終演後、名勝負と語り継がれるスポーツの試合を観戦した後のような充実感があった。開場から「ブラボー」のコールとともに「ありがとう」という声も飛んでいたが、自分も含めて多くの聴衆が同じ思いだったのではないだろうか。

2024年9月は63.8キロ+Walk

2024年9月の月間走行距離は63.8キロだった。今月からGarminのGPSウォッチを使用するようになったので、これからはGarminの計測距離を記録していこうと思う。20キロ弱のLSDを走った日もあったけれど、5キロや10キロを何度か走った1か月だった。白川郷や鳥越城跡・二曲城跡でそれなりに歩いた日もあった。来月は、お天気次第かもしれないけれど、紅葉の野反湖や会津西街道にも行ってみたいと思っていて、走行距離は100キロに届くか分からないけれど、気温も涼しくなってきたし、年末年始のハーフにエントリーしていたりもするので、頑張っていきたいと思う。

高橋龍太郎コレクション

東京都現代美術館で「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」を観た。国立西洋美術館で坂本夏子&梅津庸一の「絵作り」を観たときに、遅ればせながら高橋龍太郎コレクションの存在を知り、この展覧会を楽しみにしていた。東京都現代美術館の公式サイトにアップされているインタビューで、高橋龍太郎が「作品の同伴者として、いろんな領域で自分の想像を超えた作品を収集してきた」、「人間の力業の凄みに惹かれて、優れた才能ある作家の作品を集めて来たけれど、東日本大震災以降、それだけを追いかけてリアリティがあるかな、という気持ちが芽生えて、自分を消していくことで何か新しい表現を生み出している人たちの作品にリアリティを感じるようになった」、「主義主張や大きな物語がなくなった時代に表現と向き合う若い世代の辛さ、切なさに勇気づけられる」、「今、日本に生きていて、この時代に生きているリアリティを作品から感じたい」、「僕から生まれたコレクションが、僕から離れた実体のある怪物になっていて、今となっては僕を引きずっている」といった話をしていて、改めて展示を振り返ってみると、こういった言葉に説得力が感じられる。様々な方向に向けてパワフルであったり、切なかったり、静かだったり、温かかったり、ひとりの人間が数十年をかけて時代と共に育てたコレクションの多面性が印象深い展覧会だったと思う。

ラ・ボエーム

井上道義が最後に指揮するオペラということで、東京芸術劇場コンサートホールにラ・ボエーム(演出:森山開次)を聴きに行った。特に第二幕の祝祭感が圧巻で、これで井上道義を聴き納めにしてもいいな、と思える演奏だった。ソリストも、読響も、ダンスも、美術も、演出も、すべてが素晴らしく、オーケストラピットで指揮棒を振る井上道義の姿とともに、記憶に残るコンサートになった。

第71回日本伝統工芸展

日本橋三越本店で第71回日本伝統工芸展を観た。ここ数年、毎年のように日本伝統工芸展に足を運んで、多くの作家さんが日本全国で美しい工芸品をコツコツと作られている様子を想像して励まされている(東北と北海道の作品が少ないように感じて、少し残念なのだが)。今年は、一週間前に金沢に旅行したこともあってか、特に漆芸の作品に魅力を感じた。螺鈿、沈金、蒔絵といった細工を施した作品にも、木目の美しい拭漆の作品にも、受賞作品に限らず心を惹かれる作品が多かった。もっとも、今回の展示の中で一番心を惹かれたのは吉田周平の青瓷鉦鉢で、なだらかに歪んだ縁が立ち上がる複雑で力強い貫入を纏った青磁の大鉢に地球をイメージさせる深みを感じた。どんな作家だろうと思ってネットで検索してみたところ、東北大学理学部地球物理学科を経て東京藝大で陶芸を専攻された方のようで、作品のイメージと経歴がシンクロして、ちょっと驚きだった。