江戸時代の思い出

本多劇場でナイロン100℃の公演「江戸時代の思い出」を観た。なかなかコメントが難しいのだが、こうした3時間の力業でしか味わえない世界っていうのもあるんだな、といった妙な納得感がある。「理解不能」なものをそのまま受け止めて味わうという意味では、唐十郎の「泥人魚」もそうだったと思うのだけれど、今回はもっとナンセンスで、乾いていて、お祭り的で、笑いがあって、最初から最後まで馬鹿々々しくて、ところどころ冗長で、どことなく親密さもあって、ベテランの技と若気を忘れない攻めと遊びの匂いがあって、自分にとっては「素晴らしい!」だとか「傑作!」だとか手放しで褒めたくなるような感じではないんだけれど、観終えた後で手の中に残る確かな存在感がある。それは、結局のところ芝居を作っている人たち(と芝居が好きな観客)の存在感なんだろうなぁと思ったりもしている。

2024年6月は80キロ+Walk

2024年6月の月間走行距離は80キロだった。だんだん暑くなってきたこともあり、長い距離を走るのが辛くなってきて、今月はマックス15キロだった。一回に走る距離を短くしてペースを上げていこうかと思っている。

東京シティ・フィル第371回定期演奏会

東京オペラシティでTCPOの第371回定期演奏会を聴いた。モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲、小山実稚恵を迎えたベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番、シューベルトの交響曲第8番「ザ・グレート」というプログラムで、どの曲もそれぞれに楽しかったのだが、鈴木秀美の指揮から生まれる何処となく典雅で独特なリズム感がプログラムを通じて印象的だった。特にシューベルトは、両端楽章も迫力のある演奏だったが、2楽章の淡々としたリズムの奥でシューベルトが歌っているような響きに魅力を感じた。小山実稚恵のピアノも久しぶりだったが、情熱のこもった演奏だったと思う。アンコールのシューベルトの即興曲(Op.90-3)もしみじみと素敵な演奏だった。

雨とベンツと国道と私

東京芸術劇場シアターイーストでモダンスイマーズの「雨とベンツと国道と私」(作・演出:蓬莱竜太)を観た。東京芸術劇場のHPで3000円で観られる良さそうな芝居があることに気付き、何の予備知識もなくチケットを購入し、蓬莱竜太が数年前にNHKのプレミアムシアターで観た「まほろば」の書き手であることも観劇の前日に知った。夕方まで激しい雨が降っていたのに、劇場は満席で、自分のように一人で来ている客が多く、世代も性別もばらばらで、こういう観客を呼べるというのは素敵なことだよな、と芝居が始まる前から思ったりした。芝居は、いっぱいいっぱいで精一杯生きている人たちを、優しい目線で、楽しく、深く描いていて、8人のキャストのうち3人は女性なのだけれど、全体的にどことなく「男子っぽさ」を、壊れていくY染色体を抱えた不完全な男子の滑稽さと愛おしさを感じた。男性キャストだけでなく、主演の山中志歩の演技からくる印象もあったかもしれないし(「五味栞の恋」のシーンは男子の初恋っぽいテイストがあって、特に雨のシーンは好きだ。)、映画を巡る芝居であったこともあったかもしれない(好きな映画として名前があがっていた「薔薇の名前」、「未来世紀ブラジル」、「マッドマックス」、「ギルバート・グレイプ」、「ベティ・ブルー」とか、同世代(の特に男子)を感じる。)。パワハラやSNSやコロナなど、最近の話題や問題もあるのだけれど、最後に心に残るのはそれぞれに自分の全部を乗っけて走っている大人たちの姿で、その余韻がこの芝居の記憶となっている。それにしても全席自由席3000円は、観客のお財布に優しくてありがたいというだけでなく、値段が高ければ良いものだと安易に考えがちな世の中に静かに物申しているようで、じわっとかっこいい。

野反湖

早朝に自宅を出て8時30分頃に野反湖に着き、2時間少々で湖畔を一周した。レンゲツツジが満開に向かうところで、草木の若々しい緑や青い空や湖とのコントラストが美しかった。この時期の野反湖を訪れたのは初めてかもしれない。6月中旬でもまだ梅雨入り前で、10時頃までは青空が広がっていたが、その後は徐々に曇って来た。帰路は大滝の湯に立ち寄り、中之条から息子さんの運転で連れて来てもらったという90歳の老翁と湯の中で語り合い、湯畑の傍らでいつもの揚げ饅頭を食し、早めに草津を出た。