東京国立近代美術館で「中平卓馬 火-氾濫」を観た。いろいろな機会に中平卓馬の名前や写真、文章に接することはあっても、まとまった数の作品をクロノロジカルに観たことはなかったので、時代を背景にした作家の遍歴を感じらる良い機会だった。改めて向き合うと自分には抽象度が高いと感じられた第1章「来るべき言葉のために」の「アレ・ブレ・ボケ」の写真から、「事物が事物であることを明確化することだけで成立する」方法を目指す「植物図鑑」の宣言を経て、急性アルコール中毒による記憶喪失後のある意味突き抜けた印象を受けるカラー写真へと変わりゆく姿が思い返してみてもやはり印象深く、特に晩年の写真には、その写真だけを見てもなかなか感じることができない魅力を味わうことができたように思う。画面上で鑑賞される古びることのないデータとしての写真が溢れる状況の中で、50年前にプリントして展示された「氾濫」と2018年に新たにプリントされた「氾濫」を観る機会を得て、物としての写真や技術について考えさせられたことも、貴重な体験だった。
私たちのエコロジー
森美術館で「私たちのエコロジー」を観た。六本木ヒルズでの所用を済ませた後に、時間に少し余裕があったので、森美術館開館20周年記念展はどんな展覧会だろうかと思って出かけたのだが、残念ながらかなり急ぎ足での鑑賞だったこともあってか、自分にはあまり刺さらなかった。森美術館に足を運ぶ機会は少ないのだが、ここを訪れると展示室の壁一面の窓から見下ろす東京の眺望にいろいろと考えさせられる。この窓からの眺めが、なかなかパワフルな作品に思えるのである。
VOCA展 2024
上野の森美術館でVOCA展 2024を観た。31回目の開催とのことだが、足を運んだのは5回くらいだろうか。今回はチケットぴあのポイントで招待券を頂戴して出掛けてきたのだが、いずれの作品からも表現に向けられた様々な熱が感じられるようで楽しかった。VOCA賞を得た大東忍の「風景の拍子」もオーラのある作品だったが、自分は、山下耕平の「自室の模様」、大山智子の「SETOUCHI」、小山維子の「二重奏-あらわれることについて・ふれることについて」といった作品にも心惹かれた。20年間ひたすらイカを描いているという「イカ画家」宮内裕賀を知ったことも収穫だった。
余市と小樽
義父母と夫婦で余市と小樽に出掛けてきた。余市では、ホテルLoopでワインと料理を楽しみ、ニッカウヰスキー余市工場を見学し、小樽では、運河や境町通りを散策し、似鳥美術館を訪れ、銀鱗荘の眺望と食事を楽しんだ。初めて北海道を訪れた義母や妻は雪景色を楽しんだようだった。2泊3日の短い旅行だったけれど、思い出深い良い旅になった。



ところで、小樽は義父にとっては石原裕次郎の街で、子供たちにとっては山口一郎の街かもしれないけれど、自分にとってはやはり岩井俊二の「Love Letter」の街である。