東京シティ・フィル第368回定期演奏会

東京オペラシティでTCPOの第368回定期演奏会を聴いた。シベリウスの「タピオラ」は、オケの音の鮮やかさというか生々しさに強い印象を受けた。墨痕淋漓たる演奏とでも言うのだろうか、撓やかな筋肉が生み出す丁寧に磨かれたフレーズの始まりと終わりそして重なり合いに音の美しさを感じた。マーラーの5番は、2年前に聴いた大野和志と都響の演奏とはある意味で対照的な印象を受けた。煌びやかな料理が次々と展開する都響の演奏と比較すると、TCPOの演奏は、それぞれの具材に丁寧な仕事と下味を付けてまとめ上げた一皿の料理を5楽章かけて味わっていくような、丁寧な鈍さのようなものを感じる。今回の演奏も素晴らしかったのだが、むしろ、今は丁寧な鈍さを磨き上げる下地を鍛え蓄えた段階で、この道筋の先にさらなる高みがあることを指揮者も楽員も(聴衆も)信じてアタックしている熱量が感じられて、数年後のさらに進化したTCPOのマーラー5番を聴いてみたいと思わせられた。これで3年連続でTCPOのシーズン最後の定期演奏会を聴いたことになる。来シーズンは、2022年のサントリー音楽賞受賞コンサートで聴いたマーラー7番を再び聴く機会がありそうで、TCPOの定期演奏会に何度か足を運んでみたいと思っている(プレトークも楽しみにしている。)。会場で購入した2022年3月のマーラー9番のCDも、じっくりと聴いてあの演奏会を思い起こしてみたい。

Tribute to RYUICHI SAKAMOTO

Intercommunication Centerで「Tribute to RYUICHI SAKAMOTO」を観た。コンサートの前に立ち寄って、比較的小規模な展示を観たのだが、冒頭の「センシング・ストリームズ 2023-不可視・不可聴」の展示を20分ほど眺めてしまった。細かい線やパターンやスパイクが渦巻き、流れ、変化する大画面の画像と、中音から低音の成分が多い周期の異なる複雑なノイズが流れる作品で、作品解説では電磁波を可視化・可聴化するプロジェクトと説明されているのだが、その初めて触れる視覚や聴覚のイメージを、10分から20分の時間をかけて自分の中の語彙と結びつけようとすると、電磁波という自分にとっては抽象度が高く遠い世界ではなく、むしろ自分の身体の中の細胞や神経のコミュニケーションを可視化・可聴化するとこういった画像や音響になるのではないかという気がしてきた。思っていたよりも若い世代の来場者が多く、シアターのプログラムはチケットが完売で、坂本龍一の人気の高さが窺えた。

2024年2月は10キロ+Walk

2024年2月の月間走行距離は10キロだった。左腿裏ハムストリングの痛みは、おそらく12月に在宅勤務を続けて座りっぱなしだったことが災いして筋肉が固まってしまったせいだろうと推測し、ストレッチを心掛けたのだが、なかなか痛みが去らず、結局、月末になって5キロを2回走っただけで今月も終わってしまった。ランニング以外の運動は、写真散歩で4時間ほど歩いた日があったくらいだろうか。来月末のハーフマラソンにエントリーしているのだが、DNSかなぁ。

月の岬

東京芸術劇場シアターウエストで unrato#11「月の岬」(演出:大河内直子)を観た。公式サイトを眺めた程度で何の予備知識もないままに、何となく良い芝居になりそうという勘を頼りにチケットを買って一人で出かけてきたのだが、じわっと来る芝居だった。自らが招いた不幸な事故から父親を早くに亡くした姉と弟が、おそらく不幸に耐えながら懸命に守ってきた家庭があって、その家庭が弟の結婚を機に変容していく。その様子がひと月程度の時間軸の中で描かれるのだが、説明的な台詞は少なく、登場人物は皆それぞれの人生を生きていて、またそれぞれに異なる接点で交わっているので、ある人物にとって他の人物は余白が多く、その余白の多さの集積が観客に提示されつつも、その余白にはある種のまとまりというか、トーン、雰囲気がある。家族、人間関係、その歴史、家(家族の一員のような家!)、着物、島、そのほか様々なものに互いを呼び寄せ合う重力のようなものがあって、それが温かくもあり、また苦くもあるのだろうと思う。2時間の芝居があっという間で、終演後ももう少しあの世界に止まっていたい名残惜しさが残った。戯曲デジタルアーカイブに戯曲があったので、しばらくしてから読んでみたいと思う。

東大前・後楽園・本郷三丁目

良く晴れた連休の中日に東大前後楽園本郷三丁目の散歩を楽しんだ。今回はX-T5にXF33mmを付けて出かけたのだが、自分には50mm相当の画角は街歩きの散歩にはやや画角が狭く感じてしまう。42㎜相当の画角では狭さを感じることは少ないので、微妙な違いなのだけれど、今回の散歩の写真はすべてほぼノートリミングで掲載することになったので、やはり50mm相当の画角は画面を切り取る感覚なのだろう。Fujifilmから35mm相当の画角のレンズを付けたX100VIの発売が発表されて、お散歩に丁度良さそうで気になっているのだけれど(SDカードが2枚入ると嬉しいのですが。。)、X-Pro4の発売を待って比べてみたい気もするけれど、そうしているうちに品薄で買えなくなりそうで、悩ましい。

東京大学総合図書館の前で