藤田嗣治 絵画と写真

東京ステーションギャラリーで「藤田嗣治 絵画と写真」を観た。特に藤田嗣治の絵が好きというわけではないのだけれど、7年前の東京都美術展での没後50年の回顧展など、展覧会があると足を運んできた。30代のパリでの挑戦、40代の世界旅行、50代の太平洋戦争、そして戦後の離日といった、明治19年生まれの藤田嗣治が時代の奔流の中を生きた人生に考えさせられるところが大きいからかもしれない。今回の展覧会は藤田嗣治の写真を観てみたいと思って出掛けたのだけれど、1963年に描かれた「フルール河岸」に心を動かされた。狭い場所から空に向かって伸び広がる雑草のように地面から立ち上がる絵の中の建物の姿から受ける印象は、隣に展示されていた阿部徹雄が1952年に同じ場所を撮った写真にはないもので、この場所からこの絵が生み出されるのかという、様々な困難を越えて喜寿を迎える歳になっても生き生きと瑞々しくあり続ける画家の心象が感じられるように思えて、静かに揺さぶられる。帰宅後、グーグルマップで「Quai aux Fleurs」を検索してStreet Viewを見てみると、今も同じ建物がこの場所にあることが確認できた。いつかパリに行く機会があったら、この場所でこの風景を眺めてみたいと思っている。

音楽の魅力発見プロジェクト第12回

すみだトリフォニーホールで、「下野竜也プレゼンツ!音楽の魅力発見プロジェクト第12回」を聴いた。前半は、下野竜也がマーラーの交響曲第1番を解説するコーナーで、楽譜を大スクリーンに投影しながら、新日本フィルハーモニーの短い演奏を交えつつ、下野竜也が堅苦しくない話をするという楽しい時間だった。宮本益光をソリストに迎えて演奏したマーラーの「さすらう若人の歌」第2曲と第4曲も素敵な演奏だった。休憩を挟んで後半は、下野竜也が指揮する新日本フィルハーモニーのマーラー交響曲第1番で、心を動かされる素晴らしい演奏だったと思う。指揮者が音楽をデザインするというよりも、オーケストラが演奏したい音楽を指揮者が探り当てているような、個々の奏者が音楽を求める自由闊達なオーケストラの魅力をひとつの音楽にまとめ上げて花開かせるような、そんな音楽の魅力に心を動かされた。来年はブルックナーのロマンティックを演奏する予定とのことで、是非聴いてみたいと思っている。それよりも前に下野竜也と新日本フィルハーモニーのコンサートが東京であるなら、それも聴いてみたいなぁ。

武州街道と上野小海線

埼玉県内の実家から矢野顕子のコンサートがある八ヶ岳高原音楽堂まで、高速道路を使わずに、武州街道(国道299号)と上野小海線(県道124号)をドライブした。狭隘な箇所も多かったけれど、対向車は少なく、晴天にも恵まれ、緑豊かな山を走る快適なドライブだった。途中、ルート沿いにある1985年8月の御巣鷹山日航機墜落事故で亡くなった方々を弔う慰霊の園に立ち寄った。ドライブの最後には、キャベツ・レタス・グリーンボールの畑が広がる風景を眺めながら、学生時代の夏休みにひと月半ほど野辺山の高原野菜農家でアルバイトをしたときのことを懐かしく思い出したりもした。

慰霊の園

矢野顕子 弾き語りコンサート

八ヶ岳高原音楽堂で矢野顕子の弾き語りコンサートを聴いた。我が家に数多あるCDの中で、矢野顕子の Super Folk Song はトップクラスの愛聴盤で、ドキュメンタリー映画もDVDを購入して何度が観ているのだが、クラシック以外のコンサートに出掛ける機会は年に1回もなく、矢野顕子のコンサートも随分前にBlue Note Tokyoで聴いたことがあっただけだったので、ソロの弾き語りコンサートを聴く機会が得られたことが、まず嬉しかった。「風をあつめて」「自転車でおいで」から始まって、耳に馴染んだ曲や自分は聴いたことがない歌も交えつつ、「ひとつだけ」で終わる選曲も、アンコールの「Prayer」「ラーメン食べたい」も、特に「ひとつだけ」にはデュエットしていた忌野清志郎の歌を感じたりもして、このコンサートで聴くことができて嬉しかった。時として歌よりも雄弁な矢野顕子のピアノの音も、「今日はとってもいい音がしている、やる気に満ちている」と話していたみたいに素敵だったし、今日も富士山は見えなかったけれど、ステージの後ろの雨降りの風景も印象的だった。ライブもいいな、と思えたので、次は、矢野顕子と上原ひろみのコンサートがあったら(チケットが買えたら)行ってみたいなと思っている。あと、Love Lifeの映画があることも知らなかったので、観てみないと。清志郎だけでなく、亡くなった人が思い出される曲も多かったけれど、そんな人たちもお盆でちょっと帰ってきているみたいな、そんなに遠いところにはいないような気もして、心に残る8月15日だった。

ムジカテーハとSpotify

3、4年前からか、普段は接する機会が少ない世界中の音楽を数多く紹介してくれているサイト、ムジカテーハ/Musica Terra をたまに覗いてみてはちょっと聴いてみるという楽しみ方をしていたのだけれど、もっとちゃんと聴いてみたくなってきて、今日、Spotifyに登録をして何枚かのアルバムをスマホにダウンロードした。音楽配信サービスとは距離を置いてきたのだけれど、ムジカテーハで紹介されているアルバムは、少なくとも日本ではCDを購入することができず、音楽配信サービスでしか聴くことができないという事情があり(ブラジル・アルゼンチンのアルバムは大洋レコードにCDがあるかもしれないけれど)、また、ここ数週間、我が家に2000枚から3000枚程度はあろうかというCD(クラシックが3分の2、残りのうち3分の2が洋楽、邦楽、ワールドミュージックで、3分の1がジャズといったところだろうか)のうち、MP3に落としてスマホに入れてある枚数を、できれば半分近くまで増やそうかと思って作業をしているうちに、もう配信サービスでいいんじゃないかと思えてきたこともあって、Spotifyを利用してみることにした。今日のところは、ムジカテーハの記事を読んだり数曲聴いてみたりして気になったいたアルバムを何枚かダウンロードして(Yamandu Costa、Ganavya、Lenna Bahuleなどなど)、在宅勤務のBGMに流してみたのだけれど、遅ればせながら、こういう時代になったんだなぁと、素直に技術やサービスの進歩に感謝している。もちろん、音楽愛に満ちたコンテンツを無償で提供してくれているムジカテーハや大洋レコードにも、心から感謝している。