マーラー交響曲第5番(大野和志/東京都交響楽団)

東京芸術劇場で大野和志指揮/東京都交響楽団のマーラー交響曲第5番を聴いた。大野和志と都響の演奏は、数年前に年末の第九を聴いたときに、何度も聴いてきた曲が改めて輪郭をくっきりとさせたような、見慣れた風景が特別な光でいつもとは違う存在感を現したような、そんな感動を覚えたのだが、今日のマーラーも、この曲の複雑さ、美しさ、怪異さ、滑稽さ、様々な要素が熱を帯びたオーケストラの音から立ち上がってきて、一流の素材を一流の料理人が捌いた切れ味抜群の料理が次々に運ばれてくるような豪華さがあり、これを満腹を気にすることなく堪能できるというのは、なかなか幸せな経験だった。
第9番も、是非、大野和志と都響の演奏を聴いてみたいと思う。
マーラーに先立って演奏されたR.シュトラウスのオーボエ協奏曲(オーボエ:広田智之)も、ナチスドイツの終戦直後に作曲されたとは思えないような明るく伸びやかな曲調で、暖かく華やかな気分にさせられた。