ドイツ・カンマーフィル

文京シビックホールでパーヴォ・ヤルヴィが指揮するドイツ・カンマーフィルハーモニーの演奏を聴いた。一曲目のロッシーニを感じさせるシューベルトのイタリア風序曲から、しなやかに伸縮する緻密で柔軟なネットが絶えず変化しながら音楽を紡ぎ出していくようなオーケストラ全体の一体感と、それを形作る個々の演奏者のエネルギーを感じた。二曲目のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、ヒラリー・ハーンに代わってソリストを務めた樫本大進の演奏が素晴らしく、特に第一楽章のカデンツァは気迫のこもった名演だったと思う。三曲目のシューベルトの未完成では、二曲目までとは少し変わって、熟成が進んだシルキーな赤ワインの雰囲気に酔わされ、四曲目のモーツァルトの交響曲第31番「パリ」からはモーツァルトの音楽の生命力をもらい、アンコールに演奏されたシベリウスのアンダンテ・フェスティーヴォには北欧の光や空気を感じた。小規模な編成のオーケストラの魅力に改めて気付かされて(木管、特にクラリネットが素敵だった!)、オルフェウス室内管弦楽団の演奏も聴いてみたいなぁと思ったりした。文京区(文京アカデミー)の年に一度の目玉企画は、昨年のコンセルトヘボウの公演も素晴らしかったけれど、今年も記憶に残る素敵な音楽を楽しむ機会を(そこまで高くない価格で)提供してくれて、地元民としてはとても嬉しく、感謝している。