マーラー交響曲第9番(ブロムシュテット/NHK交響楽団)

NHKホールでヘルベルト・ブロムシュテット指揮/NHK交響楽団のマーラー交響曲第9番を聴いた。コンマスの篠崎史紀に支えられて95歳のブロムシュテットがホールに現れただけで思わず涙が出そうになった。自分はNHK交響楽団の定期会員でもなく、ブロムシュテットのコンサートに足を運ぶのも数年前のNHK交響楽団との年末の第九以来なのだが、長年にわたりN響アワーやクラシック倶楽部などで演奏に接してきて、日本のクラシック音楽界でブロムシュテットがどれだけ敬愛されてきたかを察することはできる。演奏後の観客総立ちのスタンディングオベーションに加わりながら、悦びと感謝を感じつつ、真摯な仕事と信頼関係を積み重ねた時間が持つ重さといったものに強く心を揺さぶられた。近くの席に来ていたクラウス・マケラや、来場していた多くの音楽家の方たちにとっても、また自分のように音楽を仕事とはしない方たちにとっても、演奏を超えるものが伝わるコンサートだったのではないかと思う。