昨年12月に開業した神保町のミニシアター「シネマリス」でパトリシオ・グスマン監督の「チリの闘い」(第1部ブルジョワジーの叛乱、第2部クーデター)を観た。ストレートな情熱を感じる見応えのある作品だった。最近、松村圭一郎の「海をこえて」(講談社)で人間の社会を対象として記述する人類学の方法論への反省を踏まえたアプローチの文章に考えさせられたり、あるいは毎年年末に観ているNHKの「ベストテレビ」で森達也がドキュメンタリーの方法論について話す言葉に頷いてきた目線からは、この作品のドキュメンタリーの力や正当性への信頼がナイーブに感じられたりもするのだけれど、そういった点も含めて、歴史的な名作という評価が相応しいように思えた。1973年9月のクーデターに至る経緯はそれだけでも痛ましい事件なのだけれど、その後のピノチェト政権下でさらに痛ましい経験が繰り返されることになる。クーデター後のチリを振り返る同監督の「夢のアンデス」を4年ぶりに観返してみて、「チリの闘い」を観たことによって、これとは異なるアプローチでチリへの想いを語る「夢のアンデス」への理解が深められたように思えた。「夢のアンデス」は閉館した岩波ホールで最後に観た映画だった。その映画と、新しく神保町に誕生した「シネマリス」で最初に観た映画が繋がったことを、ちょっと嬉しく思っている。