トリオ・アコード

東京文化会館小ホールでトリオ・アコード(Vn 白井圭、Vc 門脇大樹、Pf 津田裕也)のメンデルスゾーンを聴いた。フェリックスの姉、ファニー・メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲で始まり、フェリックス・メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番と第2番、アンコールに「歌の翼に」というメンデルスゾーン尽くしのプログラムで、どの曲も聴き応えがあったのだけれども(聴く機会が少なかったピアノ三重奏曲第2番もいい曲だなぁと思った)、その中でもメントリ(ピアノ三重奏曲第1番)の第1楽章(から第2楽章)は圧巻の演奏だったと思う。今年の春祭でシューマンのピアノ三重奏曲第2番を聴いた時にも感じたことだけれども、3人の個性は、共通の土台を持ちつつも、当然のことながらそれぞれに異なるような気がしていて、荒っぽく例えれば、色と艶の白井、誠と基の門脇、理と知の津田、あるいは、感性の白井、身体性の門脇、理性の津田といった感じだろうか。でも、20年以上も一緒に演奏してきているというこの3人が学生時代の仲間うちの距離感で密にスクラムを組んで盛り上がっていく時の完成度の高さには否応なく心を揺さぶられる。この3人の演奏を10年後、20年後も聴き続けていきたいという気持ちにさせられるのである。そのとき、トリオ・アコードはどんな演奏を聴かせてくれるのだろう。緻密な完成度の高さと迫力を味わわせてくれる一方で、3人がちょっと解けて遊びのあるような演奏も聞かせてくれたら、さらなる魅力が出てきそうな気もする。トリオ・アコードの自主企画的コンサートは初めてかもしれないという白井のトークもあったけれど、これからもますますご活躍されて、定期的にコンサートを開いてくれたら嬉しいと思っている。会場で購入したメンデルスゾーンのCDも早速聴いてみたけれど、コンサートの余韻が感じられて、こちらも素晴らしかった。