東京都交響楽団第1008回定期演奏会

東京芸術劇場で大野和志が指揮する東京都交響楽団第1008回定期演奏会を聴いた。1曲目はポール・ルイスをソリストに迎えたベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番で、透明感のあるピアノが印象深かった。改めてベートーヴェンの若さを感じる曲だと思いながら、以前に聴いたチョ・ソンジンとサロネン/フィルハーモニアの演奏を思い出したりした。2曲目は生誕200年を迎えたブルックナーの交響曲第7番で、自分の中では巧みな包丁さばきで美しい料理を生み出す印象がある大野和志/都響が、ブルックナーのどんな響きを聴かせてくれるのか楽しみにしていたのだが、第1楽章からそんな御託は忘れて音楽に没入してしまった。第2楽章の繰り返すモチーフを聴きながら、東北や信州の風景、Landscape、地形、山や盆地とそこでささやかに暮らす樹々や生き物の遠景を思い描いたりもした。6月のインバル/都響のブルックナーとはまた違った趣があり、音楽を聴きながら深いところに下りていく魅力を感じる、素晴らしい熱演だったと思う。