群像短篇名作選(1946-1969)

群像短篇名作選(1946-1969)(講談社文芸文庫)を読んだ。1年程前に神保町の書店にふらりと入って水村美苗の「日本語で読むということ」などの文庫本数冊と一緒に「群像短篇名作選」3冊をレジに持って行ったところ、1冊2300円(3冊で6900円)という文庫本らしくない価格に「おっ」と思ったのだが、引っ込みもつかずに購入し、本棚に積んであった最初の1冊を引っ張り出してきて読んでみたのだが、作家18人の18篇を年代順に並べたアンソロジーを読むのは初めてかもしれず、一人の作家の短篇集を読むのとはまた違った興味深さを感じられたように思う。1946年から1969年の18篇を読んで感じたのは戦争の存在感かもしれない。それは戦争を直接扱った作品だけでなく、戦争が登場しない1969年の「骨の肉」(河野多恵子)や「蘭を焼く」(瀬戸内晴美)にもある種の「不在」あるいは「軽さ」や「寄る辺なさ」の感覚として影を落としているように感じる。1970-1999年と2000-2014年の2冊からはどんな印象を受けるのか、また、時代が下るほど読んだことがない作家の短篇が増えるので、初めて出会う作家の文章に触れられることも楽しみだ(今回初めて読んだ原民喜の文章は刺激的だった。)。