世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(演劇)

東京芸術劇場プレイハウスで「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」(フィリップ・ドゥクフレ演出)を観た。原作は、高校生の頃に初めて自分で新刊本を買って読んだ作品で、今の時代の扉を開いてくれたような高揚感を感じたことを憶えている。その後も折に触れて読み返し、40歳を過ぎた頃からはKafka on the Shoreや1Q84などと共に英訳のAudio Bookを繰り返し聴いた作品でもあり、自分と同じようにこの作品を大切にしている人も多いことと思う。そうした作品を演劇に仕立て直し、かつ日本だけでなくグローバル・ツアーを行うというのは相当なプレッシャーを感じる仕事だろうと思うのだけれど、幅広い観客の期待に十二分に応える素敵な舞台になっていたと思う。どことなくオペラ仕立てで、軽さと笑いを交えた台詞の言葉だけでなく、役者やダンサーの身体表現に非言語的イメージを語らせ、音楽や美術・照明が舞台に鮮やかなリズムや香り、豊かな色彩や陰影を創り出す総合芸術としての完成度の高さを感じる演劇で、自分と同じように、原作とはまた違った魅力を持つ演劇が生まれたことを喜ばれた方も多かったのではないだろうか。そんな演劇に刺激を受けて、久しぶりに日本語で原作を読み返してみようかなぁ、などと思ったりもしている。