東京シティ・フィル第九特別演奏会

東京文化会館で高関健が指揮するTCPOの第九特別演奏会を聴いた。心を打たれる素晴らしい演奏だった。第1楽章から第3楽章(特に第1楽章)は、一音一音を揺るがせにせず積み上げて磨き上げることで、ベートーヴェンがこの音楽に込めた思いや熱量が現代的に洗練されて立ち上がって来るような感動があった。その姿勢はソリストと合唱が加わった第4楽章になっても変わらず、オケと合唱をバランスさせる難しい舵を取りながら、目指す音楽に向けて全員が気を交わしつつ進んでいく様子に深いところから動かされた。最初の一音から最後の一音まで、充実した時間だった。ソリストの歌唱も素晴らしく、特にソプラノの中江早希の良く通るしなやかで柔らかな声に魅力を感じた。演奏後、一緒に聴いた奥さんと谷中の古書木菟や山内屋酒店まで散歩する道すがら、「隣の人のマナーが悪かった」とか「コンバスがイケメンだった」といった他愛もない話もしつつ、今年最後のコンサートで来年に向けて勇気づけられる飛び切り素敵な演奏を聴かせてもらえたことに感謝するお互いの気持ちを感じ合ったりして、心温まる年末のひとときを過ごすことができた。