新国立劇場(中劇場)で「焼肉ドラゴン」(作・演出:鄭義信)の凱旋公演を観た。10月の小劇場での公演を観た時には、パンフレットにファイナル公演という記載を見付けて、別れ難い気持ちから凱旋公演のチケットを購入し、84歳の母を連れて20日昼の公演を観終えた後も、もう少し焼肉ドラゴンの家族と一緒にいたいと思っていたのだけれど、21日の千秋楽の公演をひとりで観終えた今は、何処となく前を向いた清々しく晴れやかな気持ちでいる。全力でやり切ったオーラを発している役者さんたちの表情と、控えめにカーテンコールに応える鄭義信の姿と、満場のお客さんの盛大なスタンディングオベーションから伝わるこの芝居への愛情に勇気づけられて、アボジがトタン屋根に降る桜吹雪を眺めながら「ああ、いい心持ちだ」と口にした時のような、明日が信じられる気持になっている。同じ演目の芝居を劇場や座席を違えて観たり、2日連続で観るのは初めてのことで、それもまた良い経験だったのだけれど、凱旋公演にはやはりこの芝居を何度も観たファンの方も多く来られているようで、初めてちょっとした「推し活」気分?を味わえたことにちいさなこそばゆさを感じている。