響きの森クラシック・シリーズVol.85

文京シビックホールで小林研一郎が指揮する東フィルの「響きの森クラシック・シリーズ Vol.85」を聴いた。1曲目はソリストに小山実稚恵を迎えたベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」、2曲目はベートーヴェンの交響曲第5番「運命」という鉄板のプログラムで、チケットは完売だったらしい。「皇帝」も「運命」もしっかりと築かれて磨かれた演奏で、特に久しぶりに聴く「運命」には、改めてその存在の大きさを感じさせられたりもしたのだけれど、このコンサートの魅力はこの2曲の演奏だけでなく、アンコールにもあったように思える。「皇帝」の後で小山実稚恵が演奏したベートーヴェンの「エリーゼのために」は、自分が弾いてみたり、身近な人の演奏や練習を耳にしたりして親しみのある曲のはずで、そうした個人的な思い出を演奏に重ね合わせることで、会場の一体感が高まったような印象を受けた。「運命」の後のアンコール「ダニーボーイ」には、何と小山実稚恵も参加して(!)、ピアノとオーケストラの心のこもった素敵な一期一会の演奏を聴かせてくれた。隣の席で一緒に聴いた「コバケンが聴きたい」という東北生まれの母も、1歳年上のコバケンが情熱を傾けて指揮する姿に元気をもらったようで、思い出深いコンサートになった。