藤田嗣治 絵画と写真

東京ステーションギャラリーで「藤田嗣治 絵画と写真」を観た。藤田嗣治の絵が好きというわけではないのだけれど、7年前の東京都美術展での没後50年の回顧展など、展覧会があると足を運んできた。30代のパリでの挑戦、40代の世界旅行、50代の太平洋戦争、そして戦後の離日といった、明治19年生まれの藤田嗣治が時代の奔流の中を辿った人生に考えさせられるところが大きいからかもしれない。今回の展覧会は藤田嗣治の写真を観てみたいと思って出掛けたのだけれど、1963年に描かれた「フルール河岸」に心を動かされた。隣に展示されていた阿部徹雄が1952年に同じ場所を撮った写真と比較すると、狭い場所から空に向かって伸び広がる雑草のように地面から立ち上がる絵の中の建物の姿に、この場所からこの絵が生み出されるのかという、様々な困難を越えて喜寿を迎える歳になっても生き生きと瑞々しくあり続ける画家の心象が感じられるように思えて、静かに揺さぶられる。帰宅後、グーグルマップで「Quai aux Fleurs」を検索してStreet Viewを見てみると、今も同じ建物がこの場所にあることが確認できた。いつかパリに行く機会があったら、この場所でこの風景を眺めてみたいと思っている。