9つのプロフィール 1935→2025

東京都現代美術館で開館30周年記念MOTコレクション「9つのプロフィール 1935→2025」を観た。1935年から2025年までの90年間を10年ごとの9つの期間に区切って、多くの作家の300点近い作品を展示する企画で、ひとりの作家の作品をクロノロジカルに観る展示以上に、時代の移り変わりや時代との関わり、あるいは前の世代を乗り越えようとする動きを意識しながら作品と向き合う時間になった。特に足を止めた時間が長かった作品は、阿部合成「顔」(1937年の日本人が何を思っていたかを強烈に意識させられる)、向井潤吉「影(蘇州上空)」(昨年訪れた蘇州の街を思い出しながら)、田中佐一郎「赤田張野営」(戦場に連れて来られた馬と兵士の間に何ほどの違いがあるだろう)、香月泰男「昼」(香月泰男の人生を思いながら)、鶴岡政男「重い手」(掌は上を向いていて)、李禹煥「線より」(もの派が生まれた時代の流れを思いながら)、草間彌生「自殺した私」(草間彌生に出会えたような気がして)、杉本博司「Polar Bear」(重さと軽さと美しさ)、辰野登恵子「Untitled」(過去に何点か観た90年代以降の大きな油彩はどれも素敵だなぁと思った)といったところだろうか。1935年から2025年の90年間は、今年90歳を迎える自分の父親の人生と重なり合う。広島県府中市に生まれ、両親を亡くしてから東京に出てきて夜学に通い、母と結婚し、3人の子供を育てた父は、美術とはほとんど縁がなかったと思うけれど、展示されていた作品が互いに響き合うように、自分の中では、父の人生に関する記憶も作品と響き合うように感じられたことが面白かった。