東京シティ・フィル第380回定期演奏会

東京オペラシティで松本宗利音が指揮するTCPOの第378回定期演奏会を聴いた。1曲目はドヴォルザークの交響詩「英雄の歌」、2曲目と3曲目はソリストに上野耕平を迎えたミヨーの「スカムラーシュ」と逢坂裕の「アルトサクソフォン協奏曲」、4曲目はブラームスの交響曲第2番というプログラムだったのだが、逢坂裕の「アルトサクソフォン協奏曲」が素敵だった。映画やゲームの音楽を思わせる現代性や民族的な響きやリズムも感じられる複雑さも感じられる作品の面白さもあり、また上野耕平の委嘱作品ということもあってか、上野耕平のサクソフォンの魅力が十二分に感じられる演奏だった。上野耕平は、車で聴く「×クラシック」でのMCの印象とは異なり、演奏はどことなくストイックで孤独なボクサーを思わせるような、熱く冷静な闘志を持ってオーケストラを聴きつつ自分のスタンスでリズミカルなステップを踏み美しくパワフルなパンチを繰り出す、そんな印象を受けた。演奏を終えて、来場していた作曲者の逢坂裕への拍手を求める姿にも好感を持てた。全ての作品を通じて、松本宗利音の指揮には、この指揮者が10年後、20年後にどうなっているのだろうと想像できる楽しさがあった。自分の音楽を情熱的に表現する諸先輩の姿を見ながら、年月を重ねるうちに、松本宗利音も自分の音楽に磨きをかけて説得力を高めていくんだろうなぁ、などと思いながらコンサートを楽しんだ。