パナソニック汐留美術館で「オディロン・ルドン-光の夢、影の輝き」を観た。1989年に東京国立近代美術館で開催されたオディロン・ルドン展を観て、幻想的なモノクロームから音楽的な色彩への跳躍に心を撃たれてから、ルドンは大好きなアーティストであり続けてきた(たとえば、この展覧会の図録から写したルドンの絵を仕事用の携帯電話のカバーの下に入れていたりする。)。今回のルドン展も楽しみにしていたのだが、6月に入ってからホームページを見てみると、連日予約がいっぱいで入館できない状況のよう。とはいえ諦めきれず、最終日の朝から会場に出掛けて、無事に会場に入れて頂いた。展示の冒頭に日本の画家が愛蔵していたルドンの作品が数点展示されていて、特に「アルジェの女たち」は印象深かった。その後は年代を追って作品を辿るオーソドックスな展示で、やはり色彩が響き合う1890年代半ば以降(50代半ば以降)の作品に惹かれる。自分も50代半ばになって同年代のルドンの作品から感じるのは、この年齢になって獲得した心の自由さとでも言ったらよいのだろうか。ルドンの作品からは、政治や商売からは距離を置いて、自分の心と対話する中で生まれて来た印象を受けるのだけれど、その対話のありようが、長年の熟成を経て角が取れ、深さと純度を増して豊かな香りを纏うようになっていったように感じる。そんなルドンにたっぷり出会える素敵な展覧会だった。今回の展覧会の図録は完売ということで、改めて1989年の展覧会の図録を捲ってみたけれど、バブル経済の最中に世界中から作品を集めてきたかなり大規模で充実した展示だったことに改めて思い至った。また、ルドンのコレクションで名高い岐阜県美術館が1989年以降もいくつかの作品を収集されてきたことにも気付いた。まだ岐阜県美術館を訪れたことがないのだけれど、機会を見付けて足を運んでみたいと思っている。