菅沼金六展~人物画に魅せられて

文京シビックセンターのギャラリーシビックで「生誕120周年 菅沼金六展~人物画に魅せられて」を観た。戦前にシカゴで絵画を学び、戦後は雑誌やポスターなど商業デザインの世界で活躍した菅沼金六の作品を紹介する小規模ながらバランスよく丁寧に企画された展示で、展示作品の中では特に菅沼が60歳を過ぎてから描いたデッサン、油彩、パステルの人物画に心惹かれた。晩年、毎年のようにロサンゼルスに出掛けて描いた人物画のモデルたちについて菅沼が書いた文章がパネルに引用されていて、夢を追いかける若い人たちに寄せる菅沼の思いに人柄が偲ばれた。数多くの商業デザインの作品を世の中に送り出し、時代の雰囲気に明るさや優しさをもたらす仕事をされたであろう菅沼が、そうした仕事と重なり合いつつも少し隔たった、よりパーソナルな絵画の領域で、自分ひとりの歳月を重ねつつ作品の充実を増していった様子が思い浮かべられて、じんわりと心が温められた。菅沼金六に出会う機会を得られた素敵な展覧会だった。