東京シティ・フィル第375回定期演奏会

東京オペラシティで高関健が指揮するTCPOの第374回定期演奏会を聴いた。1曲目はソリストに奥井紫麻を迎えたサン・サーンスのピアノ協奏曲第2番で、初めて聴く奥井のピアノが素晴らしかった。力みのない細身の身体が弾き出すしなやかで力強く濁りのない音が素早いパッセージを物ともせずに美しく連なる様子は圧巻で、充実した演奏だった。機会があったらラフマニノフやプロコフィエフ、あるいはモーツアルトの協奏曲も聴いてみたいと感じて、その意味で今回のサン・サーンスという選曲も素敵だったと思う。オーケストラも分厚い音でピアノに応えていて、聴き応えがあった。アンコールのラフマニノフのプレリュード(これも素敵な演奏だった)と休憩を挟んでからの2曲目はマーラーの交響曲第7番で、こちらも異形の大曲を存分に響かせた熱演だった。2022年8月に高関健のサントリー音楽賞受賞記念コンサートでこの曲を聴いたときのブログには「奇怪さを備えた祝祭的・カーニバル的な趣もある作品」と書いていたが、今回はそういったパーソナルで感性的な印象よりも、より理知的な手触りの充実した実験的な精神が実りを結んだ作品といった印象を受けた。今回はいつも以上にゴージャスで盛大な定期演奏会で、日常では味わえない上質な刺激と活力を頂けたことに感謝したい。