東京オペラシティで小林研一郎を指揮者に迎えたTCPOの第374回定期演奏会(チャイコフスキー:交響曲第4番、第6番)を聴いた。前回の定期演奏会のプレトークで高関健がカレル・アンチェルについて馴染みの薄いオケと演奏することの難しさについて語り、今回も第6番の演奏前に小林研一郎が26年ぶり2度目のTCPOとの演奏への緊張感について触れていたけれど、どんなに百戦錬磨であったとしても初顔合わせの指揮者とオケの演奏がチャレンジであることは想像に難くなく、それだけに貴重な体験ができたコンサートだったと思う。第4番の冒頭はオケに硬さが感じられたけれど、第1楽章の中盤からは大分温まってきて、両端楽章は盛り上がっていたのだが、穏やかな中間楽章は指揮者とオケが間合いを測りながら試行錯誤しているような印象も受けた。第4番の後の短いトークで小林研一郎が「刹那に生きている」と言っていたけれど、一瞬一瞬どう音楽を創っていくか考えて試みながら音楽が過ぎ去っていくといった濃縮された時間だったように思える。言葉は至らないけれど、高関健とTCPOの音楽がオーケストラの100%の実力を磨く方向だとすると、小林研一郎の音楽はオーケストラから110%の音楽を引き出そうとする、よりドラマティックで、音楽の神様への「祈りのコバケン」の音楽と感じられて、改めてそれぞれの音楽の個性と魅力に思いを巡らせる良い機会になった。第6番に入ってからも、コバケンは東フィルを指揮するときよりも細かくオケとコミュニケーションを取ろうとしているように見受けられたのだけれど、オケとの距離は徐々に縮まり、ドラマティックで迫力のある第3楽章を堪能した後の第4楽章の音楽からは、コバケンの祈りが聴こえてきたような気がする。アンコールに演奏された第6番第3楽章最終部分の再演奏を含めて、聴衆だけでなく演奏者にとっても充実したコンサートだったように思える。