「家庭」の誕生

本多真隆著「「家庭」の誕生」(ちくま新書)を読んだ。書店で見かけて気になったものの買わずに帰り、図書館で借りて半分ほど読んだところでやはり購入したくなって手に入れた。明治以降の「家庭」や「家族」を巡る社会環境やイデオロギーの歴史を取り纏めた著作で、自分にとっての「家庭」の位置づけや意義づけを相対化して考えを深める上で大変役立つ書物に思えた。おそらく部分部分であっても比較的頻繁に再読することになりそうな気がする。最近、自分と家族との関係を期間を区切って思い返す「内観」を知って、本を読んでみたり実際に試みてみたりしたからか、改めて鶴見俊輔、浜田晋、春日キスヨ、徳永進の共著「いま家族とは」を再読したり(「いま」と言っても1999年の出版で、既に鶴見と浜田は鬼籍に入っているが)、東浩紀の「観光客の哲学」を拾い読みしたり、TBSの「西園寺さんは家事をしない」の「ニセ家族」が気になったりしていて、この流れは当分続きそうな気がする。特に東浩紀が指摘する家族の拡張性、鶴見俊輔がいう「その他の関係」に興味があって、「ニセ家族」もそのひとつだと思うのだけれど、家庭でも職場でも、人と人の関係性をより深く考える上で良い切り口を提供してくれるような気配を感じている。