リビングルームのメタモルフォーシス

東京芸術劇場シアターイーストでチェルフィッチュ×藤倉大 with アンサンブル・ノマドの「リビングルームのメタモルフォーシス」(作・演出:岡田利規)を観た。音楽と演劇が対等な関係を結ぶ作品というコンセプトや、改修後の東京芸術劇場の芸術監督となる岡田利規の作品といった点に惹かれて出掛けたのだが、睡眠不足の体調もあってか、残念ながらそこまで没入することができなかった。アフタートークで岡田利規が「演劇は考えながら観るけれど、音楽はなるべく考えないようにして聴く」と言っていたように、重ねられる言葉を追いかけながら味わう散文と、言葉よりもダイレクトに全体を一瞬で示しながら進む音楽は、必ずしも相性が良くはないようにも思える。音楽と言葉を対等に合わせようとするならば、やはり詩であり、歌であり、矢野顕子や小田朋美のことを思い出したりするのだけれど、今回の舞台は歌を排して演劇と音楽に対等な関係を持たせる試みで、チャレンジングだと思うのだけれど、その関係を十分に味わった手応えは得られていない。岡田利規の舞台や藤倉大の音楽に接してきていないので、もう少し経験値を上げてから観てみたい気もする。その時は別の作品かもしれないし、俳優と楽員の配置が対向関係になったり、ノマディックになったり、あるいは即興の要素をクローズアップしてみたり、いろいろなチャレンジがあり得たりするのかもしれない。