仮想的な失調

東京芸術劇場シアターウエストで円盤に乗る派の「仮想的な失調」(演出:カゲヤマ気象台、蜂巣もも、作:カゲヤマ気象台)を観た。狂言の「名取川」と能の「船弁慶」に基づいて、未来から振り返る現代(?)を舞台として、独特のテンポと抑揚で異化された台詞と動作で舞台が進行していく様子には、(能とは違った方法で)異なる時空を接続するユニークな味わいがあったと思う。名前(この舞台ではどうやら一つ)を失くすことと取り戻すこと、静御前が犬であること、能と比較した余白のバランス(ムサシ丸がかなり話すこと)、タイトルの理由など、まだ捉えきれないことも多いけれど、パーティーのシーンの美しさや、なとり/ムサシ丸を演じた日和下駄の独特の存在感などなど、魅力的な舞台だったと思う。今年6月に観たモダンスイマーズの「雨とベンツと国道と私」に続く3000円の舞台で、お値段を大きく上回る満足感だった。