東京都交響楽団第1000回定期演奏会

サントリーホールでエリアフ・インバルが指揮する都響のブルックナー交響曲第9番を聴いた。都響の演奏には「緻密で明晰」なイメージがあるのだけれど、インバル・都響の演奏にはそれとは一味違った「香り」のニュアンスが感じられるような気がする。インバル・都響の一昨年の年末の第九を聴いた際のブログを読み返してみると、「フレーズの柔らかな語尾に音楽を慈しみつつ育んでいる余韻が感じ取れるような、五月のように若々しく香しい演奏」「音楽の幸福感」といった感想が書かれていて、同じ第九でもブルックナーは曲の表情が違うとはいえ、やはり自分には何かしら「香り」のようなものが感じられて、それが充実した「音楽の幸福感」をもたらしてくれるのかもしれない。今回のコンサートでは、第1楽章から第3楽章(ノヴァーク版)に加えて、SPCM版の第4楽章が演奏された。我が家にあるこの曲のCDにはいずれも第4楽章がなく、どことなく中途半端な印象もあってあまり聴いていなかったのだが、今回初めて第4楽章を聴いてみて、その復元に向けた尽力に感謝し、第4楽章まで完成した曲の魅力を感じつつも、「ブルックナーはどんな第4楽章を思い描いていたのだろう」と思いを馳せながら第3楽章までで終えるという選択もあり得るなぁ、などと身勝手な感想を持ったりもした。