東京都交響楽団第999回定期演奏会

東京文化会館で井上道義と都響の最後の演奏となる第999回定期演奏会を聴いた。1曲目のベートーヴェンの交響曲第6番「田園」は、フルオケの約半分の小振りな編成で、練り上げられた精妙なアンサンブルを演奏者の思いや息づかいが感じられほど生き生きと聴かせる室内楽的な演奏だった。第一楽章の自然の描写からその繊細で表情豊かな筆致に惹き込まれ、第三楽章以降はベートーヴェンの音楽を巡って積み重ねられてきたものと共に在る気迫が胸に迫って来て、心を深く動かされた。これからも長く記憶に残る「田園」だった。2曲目のショスタコーヴィチの交響曲第6番は、大編成のフルオケでの演奏で、自分にとっては耳馴染のない曲なのだが、1楽章の心理描写的な音楽と2楽章以降の華やかさが対照的で、後半にはコミカルな響きも感じられ、井上道義が都響との最後の演奏に選んだこの曲を、別れを惜しみつつ楽しむことができた。