東京都写真美術館の3つの写真展

東京都写真美術館で、「TOPコレクション 時間旅行」、「記憶:リメンブランス」、「没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる」を3階、2階、地下1階と梯子して観た。記録としての性格を感じやすい古い写真が多く、時間旅行や記憶や没後という言葉たちにも引っ張られるように写真と記憶について、誰かが撮った写真やその写真に写り込んだものと、写真を撮った誰かや、その写真を見た誰か、その写真に写りこんだものを観た誰かやその写真の写り込んだ誰かの記憶がどう交わるのか、もともとある交わりを写真が掬い上げたり、写真が新たな交わりを作りだしたり、いい写真、あるいはいい写真たちって何なのか、線の細かさと甘さ、コントラストの硬さと軟らかさ、モノクロとカラー、画角、ライティング、露出、スピード、サイズ、技術的なことはいろいろあるけれど、そういえば最近の福田平八郎を取り上げたNHKの日曜美術館で千住博があの漣の絵を観ながら「アートは観た人の記憶に触れることが大切で、それが普遍性」といったようなことを言っていたなぁ、などと思い出しながら取り留めもない考えを巡らせた。途中で腰を下ろして一休みしながらグエン・チン・ティの「バンドゥランガからの手紙」を観たのだが(思わず最初から最後まで35分間の全編を観てしまった。)、ポートレート=顔には、その人だけでなく、その人に至る土地や文化や民族の長い歴史の記憶が写り込んでいるように感じられた。