Le Fils 息子

東京芸術劇場シアターウエストで「Le Fils 息子」(作:フロリアン・ゼレール、演出:ラディスラス・ショラー)を観た。生き難さが昂じて不登校や自傷行為を繰り返す息子を抱えた家族の物語は、その「課題=試練」自体がフランスでも日本でも他の国でも共有される同時代的な普遍性を持つことを改めて感じたし、それぞれに善い人でありながら限界を持つ人たちが悲劇を避けられないという構図にも時代を超えた普遍性を感じた。もっとも芝居自体には、自然に入り込んで楽しめたものの、正直なところ、期待したほどのパワーや魅力は感じられなかった。戯曲や演出への興味に加えて、こまつ座の「頭痛肩こり樋口一葉」の若村麻由美が素晴らしかったのでこのチケットを買ったところもあったのだが、満席の客席の90%?は岡本健一と岡本圭人の親子共演を楽しみに来たと思しき女性客で、一人でふらっと訪れた中年男性にはかなりアウェイ感があり、日本の演劇の状況についても考えさせられた。