東京シティ・フィル第368回定期演奏会

東京オペラシティでTCPOの第368回定期演奏会を聴いた。シベリウスの「タピオラ」は、オケの音の鮮やかさというか生々しさに強い印象を受けた。墨痕淋漓たる演奏とでも言うのだろうか、撓やかな筋肉が生み出す丁寧に磨かれたフレーズの始まりと終わりそして重なり合いに音の美しさを感じた。マーラーの5番は、2年前に聴いた大野和志と都響の演奏とはある意味で対照的な印象を受けた。煌びやかな料理が次々と展開する都響の演奏と比較すると、TCPOの演奏は、それぞれの具材に丁寧な仕事と下味を付けてまとめ上げた一皿の料理を5楽章かけて味わっていくような、丁寧な鈍さのようなものを感じる。今回の演奏も素晴らしかったのだが、むしろ、今は丁寧な鈍さを磨き上げる下地を鍛え蓄えた段階で、この道筋の先にさらなる高みがあることを指揮者も楽員も(聴衆も)信じてアタックしている熱量が感じられて、数年後のさらに進化したTCPOのマーラー5番を聴いてみたいと思わせられた。これで3年連続でTCPOのシーズン最後の定期演奏会を聴いたことになる。来シーズンは、2022年のサントリー音楽賞受賞コンサートで聴いたマーラー7番を再び聴く機会がありそうで、TCPOの定期演奏会に何度か足を運んでみたいと思っている(プレトークも楽しみにしている。)。会場で購入した2022年3月のマーラー9番のCDも、じっくりと聴いてあの演奏会を思い起こしてみたい。