田村隆一

田村隆一の名前に最初に触れたのは、大学生の頃、山川直人監督「ビリイ☆ザ☆キッドの新しい夜明け」の中で高橋源一郎が「日本の三大詩人は、谷川俊太郎、田村隆一、そして中島みゆきですね」と話すのを聞いたときだったと記憶している。あの時も田村隆一の詩集を手に取ってみたはずなのだが、何を読んだのか、まったく記憶がない。昨年の10月、あの映画に映り続けたモニュメント・バレーで、宮本浩次が歌う中島みゆきの「化粧」を聴きながらそんなことを思い出して、去年の暮れから今年にかけて、田村隆一の「腐敗性物質」(講談社文芸文庫)、「1999」(集英社)、「ぼくの鎌倉散歩」(港の人)を読んだ。ひとりの詩人の言葉が人生の時間軸の中で大きく変化しつつも、やはり変わらないものもあるということを感じられたように思う。それにしても、田村隆一がアガサ・クリスティやロアルド・ダールの翻訳者だったとは知らなかった。