怪物

奥さんとTOHOシネマズ日比谷へ出かけて「怪物」(是枝裕和監督)を観た。是枝監督の映画を観たい気持ちもありつつ、今回は坂本龍一の音楽が聴きたいという思いが勝っていたかもしれない。坂本龍一の「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」を読んでから、久しぶりに「シェルタリング・スカイ」を観たり、「async」や「Playing the Piano」、昔のアルバムやベスト盤などを聴いたりするうちに、「怪物」を観に行きたくなった。作品に寄り添いつつ作品を支える坂本龍一の音楽は、目立って前に出て行こうとはしないけれど、ピアノの音が印象深かった。カンヌで賞を得た脚本からは、傷つけられ、同時に傷付けてしまう人たちの様々な真実が複雑に重なり合いつつすれ違う世界の在り方を提示する巧みな力を感じた。美術や照明や録音や撮影は、リアリティとファンタジックな瑞々しさの両方の魅力を合わせ持つ精妙なブレンドが心地よかった。役者も、それぞれに確かな存在感があり、安藤さくらや現代のジョバンニとカムパネルラの二人も素晴らしかったが、特に永山瑛太の演技に心を動かされた。そして何度か映された諏訪湖の映像。あの空白に見える諏訪湖の映像が、何故かこの映画の記憶として深いところに沈殿していくような気がする。
余談だが、帰宅すると緋メダカが一尾こと切れていた。腹水病を患い始めたのは数か月前で、隔離して投薬したりもしたのだが、ストレスが大きそうで、結局、他のメダカたちと一緒に玄関先のビオトープで最後の日々を過ごしていた。餌を与えると、底土に頭を付けた病気のメダカの周囲を、迎えに来た他のメダカたちが励ますように泳ぎ回っていた。