交響詩「鏡の眼」

東京オペラシティで交響詩「鏡の眼」(井上道義指揮、東京交響楽団)を聴いた。昨年11月のN響との演奏を聴いてから、遅ればせながら井上道義のファンになり、井上道義が書いた交響詩を聴いてみたいと思い足を運んだ。一度聴いただけで曲を見渡せるような才はないので、この曲について何か言うことはできないのだけれど、分節化された様々な「音」自体の響きの美しさや楽しさが記憶に残っている。今日のコンサートでは、武満徹の「ワルツ」が、オーケストラに黒漆の輝きを放たせるイノウエ・マジックを感じられたようで印象深かった。
余談だが、何か記念にと思い、会場で井上道義と大阪フィルの「レニングラード」のCDを買った。大阪フェスティバルホールの客席に身を置いた自分を想像しながら聴いてみると、聴衆の緊張まで感じられるような気がして、第一楽章では、初代宮内庁長官田島道治が太平洋戦争の開戦を振り返って「勢いは芽生えの時に押さえないと、勢いが勢いを生んで人力ではどうにも参りません。・・・勢いというのは実に恐ろしいものです。」と話した言葉を思い出したりした。第四楽章のフィナーレは、単純なクライマックスやカタルシスではない、様々なものが流れ込み溶け込んだ響きに涙した人も多かったのではないだろうか。その場に居たかったと感じされられる録音だった。
来年2月に井上道義が指揮するN響のショスタコーヴィチも是非聴いてみたいと思っている。