辻本玲チェロ・リサイタル

トッパンホールで辻本玲チェロ・リサイタルを聴いた。久しぶりのトッパンホールで、1曲目のバッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第3番が始まったときは、音の拡がりを感じる大ホールよりもダイレクトに音が耳に届くような感覚にある種の固さを感じたのだが、第二楽章のピアノの揺れる旋律に惹き込まれてからは、2曲目のメンデルスゾーンのチェロ・ソナタ第1番が終わって休憩に入るまで、あっという間の時間だった。後半はヒンデミットの無伴奏チェロ・ソナタを経て、ブラームスのチェロ・ソナタ第2番で再びロマン派の響きを堪能した。朗々とチェロを歌わせる辻本玲は、曲間のトークも楽しく、その佇まいは何となくムードメーカーでチームを引っ張る巧打の捕手といった感じ。対するピアノの津田裕也は様々な球種を使い分けるクールで熱い技巧派の投手といったところだろうか。辻本玲のチェロも素晴らしかったが、初めて聴く津田裕也のピアノにも耳を奪われた。満席の会場には適度な緊張や集中と音楽を愉しむ温かさがあって、素敵なコンサートだった。