君といつまでも(北九州芸術劇場+市民共同創作劇)

東京芸術劇場シアターイーストで「君といつまでも」(作・演出:内藤裕敬)を観た。北九州芸術劇場が2012年から行っている「Re:北九州の記憶」プロジェクトで高齢者の方々の話しをもとに若手劇作家が創ってきた89作の戯曲をモチーフとして、新たに街の記憶の物語として執筆上演される新作戯曲ということで、北九州にも親戚が暮らしていたという九州出身の妻と一緒に出掛けてきた。約100分の上演時間で北九州を語り尽くせるはずもないとはいえ、手際よく北九州の街の成り立ちを紹介しつつ、選ばれたいくつかのエピソードを織り交ぜながら舞台は進むのだが、そこにはプロジェクトが10年間にわたって重ねてきた厚みがあって、演じる役者さんたちも皆さん魅力的で、100分がとても短く感じられた。このプロジェクトや北九州芸術劇場を応援したい気持ちになるし、そういえば妻は松本清張の「或る『小倉日記』伝」が好きだったなどと思い出しながら、北九州を訪ねてみようかという気持ちになったりもした。個人の記憶と家族の記憶、それよりも大きな共同体の記憶といったものの関係性についても少し考えてみたいと思ったりもしている。