神なき月十番目の夜

飯嶋和一著「神なき月十番目の夜」(小学館文庫)を読んだ。年が明けて飯嶋和一が解禁になったので、未読の小説のうち最も古いこの小説を手に取った。江戸時代の初頭に茨城県北部の小村で起きた百姓一揆が一村皆殺により鎮圧された事件を描いたこの小説には、人間の弱さが連鎖して悲劇を拡大していく点で、先日観た「ファーゴ」に通じるものを感じるし、また、権力が対立する者を殺めて排除していく様子には、これも先日総集編を観た「鎌倉殿の13人」に通じるものも感じる。権力も常に異分子を排除するわけではない。対話が成立せず排除に切り替わろうとするとき、逃げられるならば逃げるかもしれないが、逃げ(られ)ない場合にはどうするのか、「鎌倉殿の13人」のように様々な生き方があるのだろうし、「神なき月十番目の夜」の石橋藤九郎の生き方にも教わるところが大きい。飯嶋和一の未読の小説は「黄金旋風」、「狗賓童子の島」、「星夜航行」の3作品。新作を心待ちにしつつ、今年はあと1作品、多くても2作品を読むだけにしておこうと思っている。