オリーブ・キタリッジの生活

エリザベス・ストラウト著、小川高義訳「オリーブ・キタリッジの生活」(ハヤカワepi文庫)を読んだ。いつ、どこで、なぜ買ったのかも忘れてしまうほど前から本棚にあった文庫本を何となく取り出して年末年始に読み進めたのだが、オリーブが主役や脇役、端役で登場する13の短編のうち3つめの途中に至るまで、何故か著者は男性だと思っていた。そんなこともあって、女性の著作を男性が翻訳するというのはどんな気持ちがするものなのだろうか、特にこの本のように同時代の人物を描写する同世代の女性作家の作品を男性が翻訳する面白さや難しさに想像を逞しくしてしまった。後半のいくつかの短編は、文章が少しカラフルになったような気がして、訳者のあとがきにあるように「オリーブの出番が少ないものの中には、この連作を発想するよりも以前に書かれた短編もありそうだ」ということなのかもしれない。そうした文章の微妙なブレや人物を描く視点のズレが幾重も重なりあって曖昧な像を結んでいくところに魅力を感じたし、人生の辛さが描かれていても、辛くなり過ぎずに読み進められたような気がする。読み終えてから著者について少し調べた際に、同じ著者・翻訳者の「バージェス家の出来事」を随分以前に読んでいたことに気が付いた。こちらも書棚の単行本のページをパラパラと捲ってみたが、再読する機会が先に来るのはオリーブなんだろうな、と思った。