歌わせたい男たち(二兎社公演46)

東京芸術劇場シアターイーストで「歌わせたい男たち」(作・演出:永井愛)を観た。数日前にチラシを見た時には、いわゆる「君が代不起立問題」を取り上げた芝居であることすら知らず、題名や二兎社(永井愛)とキャストの名前だけを見て残り僅かだったチケットを手に入れたのだが、期待に違わずパワフルに味わい深い芝居だった。2005年の初演や2008年の再演のときは、国旗や国歌に関する議論が喧しく、芝居も少しヒリヒリした感じだったのではないかと想像するけれど、時を経た再演では、難しい状況におかれた人間の悲劇と喜劇をより純粋に芝居として楽しめたような気がする。もちろん難しい状況がなくなったわけではなく、日本でも、あるいは香港やミャンマーでも、多くの人たちがそれぞれに難しい状況に立たされているのだけれど。芝居の途中から、ミチルはどんな「君が代」を演奏するのだろう、清志郎や「存在の耐えられない軽さ」のロックバンドの向こうを張るようなシャンソン版を演奏するのか、ちょっと気になっていたのだけれど、そうではない余韻のある幕のおろし方が素晴らしく素敵に感じられた。