オリガ・モリソヴナの反語法

米原万里著「オリガ・モリソヴナの反語法」(集英社文庫)を読んだ。大学で第二外国語にロシア語を選択した三女が読み終えた文庫本が食卓にあったので、手に取って読み始め、そのまま楽しくスラスラと読み進めて、台風で家に閉じ込められた連休中に読了することになった。ソビエトの政治体制を背景に1930年代から1990年代までを行き来しつつ、40代を迎えた主人公が10代前半にプラハのソビエト大使館附属学校で接した恩師の人生に関する謎解きを進める筋書きを柱にしたミステリーで、重い主題をそうは感じさせずに読ませる小説だと思う。書きたいという欲望と書く技量がバランスするというのは、なかなかに幸運なことなのだろうな、という読後感があった。