ランニング王国を生きる

マイケル・クローリー著、児島修訳「ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと」(青土社)を読んだ。地方出張時に立ち寄った書店でノンフィクションを特集していた棚から数冊購入したうちの一冊で、寝床で少しずつ読み進めて読了した。アフリカを描いた本を読んだ経験は少なく、東アフリカといえばディネーセンの「アフリカの日々」しか思い出せないのだが、あの本で描かれた1920年代前後のナイロビ郊外の高地の自然や人々と、この本で描かれた2015-16年のアディスアベバ周辺の高地を走る人々は大きく印象を異にしていて、一口で言えば、著者である欧州人と描かれるアフリカ人の同質性が高い。ランナー同士という関係性もあるとは思うが、この間の100年の歴史の表れだろうと思う。日本でもバードやハーンあるいはモラエスの時代とその100年後とでは欧米との同質性が格段に高まっている。とはいえ、フルマラソンを2時間20分で走る著者が2時間8分切りを目標とするランナーたちを描いた「Running is Life」の世界は、特に目標もなくキロ6分程度ジョギングを楽しんでいる自分の暮らしとは全く違っていて、そうした同時代の異なる世界を記憶の引き出しに入れておいて、たまに思い出してみられるようになったことは嬉しい。青土社から出版されているのが意外に感じられたが、同社に勤める福島舞が担当したそうで了解がいった。