頭痛肩こり樋口一葉(こまつ座第143回公演)

紀伊国屋サザンシアターでこまつ座の「頭痛肩こり樋口一葉」(作:井上ひさし、演出:栗山民也)を観た。考え始めるといろいろと考えたいことも多く、戯曲を読んだり、一葉を読んだり、初演時の世相を振り返ったり、時間をかけてこの芝居に向き合っていきたいと思っているのだが、そういったことは取り敢えず置いておくとしても、この芝居で大いに笑ったし、泣けたし、励まされた。貫地谷しほりと瀬戸さおりの凛とした姉妹の佇まいも、増子倭文江と香寿たつきの人生の年輪を感じさせる掛け合いも、熊谷真実が垣間見せる人間の性と凄みも、いずれもそれぞれに魅力的で深く印象付けられた。おそらく10年ぶりくらいで芝居に足を運んだ妻は甚く感動して、娘を連れてもう一度観に行くと言っている。自分も、今回の公演に再度出かけることはなさそうだが、再演されるときにはまたこの芝居で描かれた6人の女性たちに会いに出かけたい、その時には、叶うことならば、もう一度若村麻由美が演じる花蛍を観る悦びを味わってみたいと思っている。家族の記憶に残る芝居を届けてくださったスタッフ、キャスト、関係者の皆さまに心から感謝したい。