岩波ホール

今年7月29日をもって閉館する岩波ホールで、最後に掛かる映画となった「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡」(ヴェルナー・ヘルツォーク監督)を観てきた。
岩波ホールに足を運んだ回数は多くない。映画をある程度集中的に観た80年代終わりの2年間に「ファニーとアレクサンデル」、「ローザ・ルクセンブルク」、「芙蓉鎮」、「TOMORROW/明日」、「八月の鯨」といった映画を観に出かけた記憶があるが、その後は4、5回しか足を運んでいないと思う。映画を観る本数が減ったこともあるが、ビデオやDVDで映画を観られるようになった影響も大きい。例えば黒木和雄や小栗耕平の映画は、DVDを借りたり買ったりして観たが、岩波ホールでは観ていない。岩波ホールが日本に紹介してくれた「大樹のうた」、「惑星ソラリス」、「旅芸人の記録」といった古い映画も、名画座に観に行き、その後DVDを購入して繰り返して観た映画だが、岩波ホールでは観ていない。
映画館通いに明け暮れた80年代末には、三軒茶屋に3軒の名画座があり、五反田東映、大井武蔵野館、三鷹オスカー、吉祥寺バウスシアター、飯田橋佳作座、大塚名画座、三百人劇場といった今はない名画座にも良く出かけて行って映画を観た。有楽町スバル座が閉館した時にも寂しさを感じたが、岩波ホールの閉館には、時代の移り変わりの無常さを改めて認識させられる。
岩波ホールに感謝したいことは数多くあるのに、何の恩返しもできずに閉館を見守ることしかできないのだが、そのことを確認する意味も込めて、ここにお礼を記しておきたいと思う。