先生とわたし

四方田犬彦著「先生とわたし」(新潮文庫)を読んだ。由良君美が書いた「吉里吉里人」の文庫版あとがきを読んでこの本のことを思い出し、数日で読み上げた。自分が駒場に通った時期は由良君美が退官する直前の時期だったのだが、当時は「ニューアカ」が持て囃され、由良君美の存在感は希薄だったように思える。自分も十人並みに浅田彰や中沢新一、あるいは蓮見重彦や見田宗介の本は何冊か読んだが、残念ながら由良君美の文章を読んだはっきりとした記憶がない。さらに残念なことに、自分はこの本にあるような師弟関係が駒場に存在することすら知らなかったように思う。授業に出ず、均せば2、3日に1本のペースで映画館に通い、興味の趣くままに濫読する気儘な2年間に得たものは大きかったと思うが、触れられず、学べなかったものの大きさを改めて省みさせられた。自分は四方田犬彦の良い読者ではないのだが、この本は駒場に通う子供たちに薦めておこうと思う。