美の標準(日本民藝館)

日本民藝館で「美の標準-柳宗悦の眼による創作」を観た。一昨年の秋から去年の春まで行われた改修工事で日本民藝館の建物がどう変わったのかを観ることも楽しみにしていたのだが、大展示室を除くと大きな印象の変化はなく、オリジナルの建築を保存するための改修だったのかもしれない。展示は、河井寛次郎、濱田庄司、バーナードリーチ、棟方志功といった常設的な展示も、室町-桃山期の工芸や絵画などの特別展的な展示も、いずれもこの建物で観るとしっくりと収まるような気がして、特に陶芸は、ひとつひとつの作品の質感、形、色、模様、佇まいが身近に感じられるように思えた。しかし、駒場の高級住宅街にある贅沢な空間で、現代となっては高額商品のオンパレードともいえる作品を眺めることが、民藝の「生活と美との交渉」から遠く離れているような感覚も拭い去れない。時間を掛けた手仕事の美がますます庶民には手が届き難い贅沢品となっていく趨勢の中で、「生活と美との交渉」はどう在ることができるのか、そんなことを考えさせられた。