民藝の100年(東京国立近代美術館)

東京国立近代美術館で「民藝の100年」展を観た。母から若い頃に柳宗理のオフィスに椅子を届けた時の話を聞いたり、実家に柳宗理デザインの物がいくつかあったりして、民藝という言葉には幼い頃に初めて触れた記憶がある。学生時代から駒場の日本民藝館に何度か足を運び、柳宗悦の「民藝とは何か」などの書籍を読み、数年前には松本民芸館を訪れる機会もあった。今回の展覧会も楽しみしていたところ、コロナ禍もあり会期末の訪問となってしまったが、1910年代から約半世紀の民藝運動の全体像を伝えようとする力の込められた展示で、学ぶところが多く、また時代との関わり方についても考えさせられた。もっとも、自分は一点一点の工芸品が語りかけてくる小さな聲に耳を傾けるような体験を好むこともあり、そういった視点からは、今回の展覧会は、個々の作品以上に、社会的な潮流としての民藝運動を描くことに力点が置かれているような印象も受けた。近いうちに改修された日本民藝館にも足を運んでみたいと思う。